Happy Birthday


イザベル♀
快活な女性。全身いたるところにピアスをあけている。

ヘレン♀
イザベルの同居人。イザベルの面倒を見る、保護者的な存在だが年はさほど変わらない。


※女性が乳首を連呼したりあまりお上品な内容ではありません。


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イザベル:
ヘレン:
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イザベル:ヘレン!! ヘレン大変なんだ!!

ヘレン :どうしたのイザベル…って…ああ、またなのね。

  イザベル:またって何!? いいから見て! 私の乳首とれてない!?

ヘレン :取れてないわよ。

イザベル:両方とも!? 適当なこと言わないで、もっとちゃんとよくみて!

ヘレン :ええちゃんと見ているわ。見た上で言ってるのよ。あなたの乳首はとれてない。自分でも確認してみたら?

イザベル:もし取れていたら怖いじゃないか!

ヘレン :取れてないって言ってるじゃないの。

イザベル:でも、仮に取れていたとしても、ヘレンは私に気を遣って「取れてない」って言うだろう!?

ヘレン :言わないわよそんなくだらない嘘。どちらかというと、取れていたら驚くわね。

イザベル:驚いた?

ヘレン :驚いてないわね。

イザベル:でも取れているかもしれない。

ヘレン :しつこいわね。だいたい、取れいていたら痛いんじゃないの?

イザベル:…痛くはない。

ヘレン :元気そうですもんね。

イザベル:でも、取れたら痛いんだろうか。

ヘレン :穴を開ける時ですらあんなに大騒ぎしていたんだもの、取れていたらもっと痛いんじゃない?

イザベル:…ってことは、本当に取れてない?

ヘレン :ええ。

イザベル:本当に、ほんっとーーーに取れてない? 私に気を遣ってるわけじゃないよな?

ヘレン :あなたに気を遣うわけないじゃない。

イザベル:いや、ヘレンなら気を遣うね!

ヘレン :私がいうことが信じられないの?

イザベル:少しだけ。

ヘレン :神に誓ってもいいわよ。

イザベル:…一気に信じられなくなった。

ヘレン :どうして?

イザベル:だって、ヘレンの祈る神なんてろくなもんじゃない。

ヘレン :あなたに言われたくないわね。

イザベル:そう? まぁ、私は神になんか祈らないけどね。

ヘレン :でしょうね。そんなことより、さっさと服を着てきてちょうだい。風邪をひかれたらたまったもんじゃないわ。

イザベル:そんなことってひどいなぁ…あのさ、最後に聞くけど…本当に取れてないんだよな?

ヘレン :ええ、そうよ。あなたの胸にはちゃんと乳首が1つずつついているわ。

イザベル:あーーーーーよかったぁ。

ヘレン :わかったら早く服を着ることね。

イザベル:はぁい。

ヘレン :…イザベル。それ、私の服よ。

イザベル:知ってる。

ヘレン :勝手に着ないでちょうだい。

イザベル:こんなところに置いてるヘレンが悪い。

ヘレン :もう。ちゃんと洗って返してよね。

イザベル:ヘレンが洗濯当番の日に出しておく。

ヘレン :結局洗うのは私じゃない。

イザベル:そんな細かいこと、どうでもいいじゃないか。

ヘレン :どうでもよくないわよ、まったく…。

イザベル:あーあ。朝からびっくりした。

ヘレン :また夢を見たのね?

イザベル:そう。乳首がぽろっと落ちる夢。

ヘレン :そんな夢みるくらいならもう塞いじゃったら?

イザベル:それとこれとは話が別。

ヘレン :一緒よ。そんなところにピアスをしているから、変な夢を見るんでしょう?

イザベル:そうかなぁ。

ヘレン :そうに決まってるわ。あける前はそんな夢見ていなかったじゃない。

イザベル:…そうだったかなぁ…あ。じゃぁさ、試しにヘレンも開けてみてよ。

ヘレン :ええ? 嫌よ。どうして開ける必要があるの。

イザベル:だって、開けたあとにヘレンも乳首が取れる夢を見たら、夢とピアスをあける行為は関連性があるってことになる。

ヘレン :そうね、それはそうかもしれないけど、私は絶対にあけません。

イザベル:いいじゃんピアスの1つや2つ。まだ処女なんだろ?

ヘレン :嫌な言い方しないで。

イザベル:事実だ。

ヘレン :うるさいわね。

イザベル:処女を捨てるなら、ニップルピアスを勧めておく。

ヘレン :絶対にお断り。

イザベル:どうして。こんなに素敵なのに。

ヘレン :素敵? どこが?

イザベル:誰に見られることもなくひっそりとしたお洒落を楽しめるってところ。見られるのは恋人だけなんだ。素敵だろ?

ヘレン :でもそんなところに穴をあけている彼女なんて、私ならごめんよ。

イザベル:あ。もしかして私に彼氏ができない理由ってこれが原因?

ヘレン :あなたの場合は、ピアス以前の問題ね。

イザベル:言うねー! 処女のくせに!

ヘレン :…それは、どちらの貫通を言ってるの?

イザベル:さぁね? 少なくともピアスは開けていない。

ヘレン :そうだけど、処女って言い方はおかしいと思うわ。

イザベル:嫌だったら開けなよ、ピアス。お揃いのピアスつけようよ。

ヘレン :お揃いねぇ…まぁ、もし開けるとしたら、耳でいいわ。

イザベル:えー! 普通!

ヘレン :普通でいいの。

イザベル:つまんない。

ヘレン :つまんなくて結構。

イザベル:でも、絶対にそのうち色んなところにあけたくなる。

ヘレン :…お断りよ。

イザベル:1度やってしまうと癖になるんだ。次、次ってどんどん増えていく。その欲求は誰にも抗えない。

ヘレン :私はそうはならない。

イザベル:どうかな?楽しみだ。

ヘレン :…朝ごはん、準備するわ。

イザベル:ああお願い。ヘレンの作るご飯大好き。

ヘレン :褒めても何もでないわよ。

イザベル:朝ごはんのあとに、お風呂とか?

ヘレン :…欲しいの?

イザベル:あるならね。…みて。行方不明事件だって。

ヘレン :…近所ではないわね。

イザベル:そうだな。しかし物騒になったものだ。やれ行方不明事件だの、やれ殺人事件だの目白押し。

ヘレン :ちょっと目に付くだけじゃない?

イザベル:でも、最近もあった気がする。

ヘレン :そりゃぁ年間の行方不明者数を考えたら最近もあったでしょうね。

イザベル:そういうことじゃなくってさぁ。こういう報道が最近もあった気がするんだ。

ヘレン :気になる事件があったら、そのあとしばらくは似たような事件が目につくものよ。

イザベル:そういうものなのかね。

ヘレン :そういうものよ。

イザベル:ふーん。まぁ、ヘレンが言うならそうかもね。

ヘレン :…テレビ、チャンネル変えてよ。

イザベル:どうして?

ヘレン :行方不明事件の話なんて聞きたくないわ。

イザベル:気にならない?

ヘレン :ならない。むしろ気分が悪いわ。

イザベル:誰か死んだわけじゃないのに?

ヘレン :それでも、嫌な事件に違いはないでしょう?

イザベル:もしかしたら、行方不明者をどこかで見かけるかもしれないじゃん。

ヘレン :見かけるわけないわ。だって、近所の事件じゃないもの。

イザベル:家出してるだけかもしれない。それなら家より離れたところにいる可能性だってあるだろう?

ヘレン :…どうせ死んでるわ。

イザベル:そうかなぁ。

ヘレン :行方不明事件で無事帰って来た話なんてあんまり聞かないもの。
     不謹慎かもしれないけど、死んでいるに決まってるわ。だから嫌なの。
     チャンネル変えるか、テレビを消してちょうだい。

イザベル:はいはい消しますよっと。

ヘレン :…ありがとう。

イザベル:今日のヘレンって、何か変。何かあった?

ヘレン :何もないわ。

イザベル:じゃぁ何か隠してる。

ヘレン :隠してない。

イザベル:生理が近いとか?

ヘレン :この間終わったばっかりよ。

イザベル:そういえばそうだった。じゃぁどうしたっていうだい?

ヘレン :だから、どうもしないって言ってるじゃない。

イザベル:うーん。おかしいなぁ。…(そばによってきて匂いを嗅ぐ)

ヘレン :ちょっとやめてよ。何してるの?

イザベル:んー?…いい匂いがする。

ヘレン :ご飯の匂いでしょう。

イザベル:ううん。もっと甘い匂い。

ヘレン :…っ! やめてってば!

イザベル:どうしたの? そんなに怒って。

ヘレン :怒ってなんかいない。あなたが変なことするからよ。

イザベル:そんなに変?

ヘレン :変。友達の匂い、普通嗅ぐ?

イザベル:うーん…時と場合による。

ヘレン :少なくとも私の周りにはそんな人いないわ。

イザベル:私がいるじゃん。やった。第1号だ。

ヘレン :前向きすぎよ…ほら、ごはんできたわ。運んでちょうだい。

イザベル:はぁい。…今日のご飯はシンプルだ。パンにサラダ、ミネストローネ。肉は?

ヘレン :ミネストローネにベーコンが入っているでしょう。

イザベル:こんなの肉に入らない。

ヘレン :朝からがっつりとしたお肉は食べる気が起きなかったの。それに最近あなた、お肉食べ過ぎよ。

イザベル:家にいっぱいあったんだから仕方ないね。腐ったらもったいないし。

ヘレン :太るわよ。

イザベル:その分運動もしてるし、力仕事だってしてるから平気。お腹にも脂肪ついてない。見てみる?

ヘレン :あなたの裸ならさっきみたわ。

イザベル:そういえばそうだった。

ヘレン :早く運んで。冷めるわよ。

イザベル:オーケーオーケー。

ヘレン :それに……………お風呂も、いれてあるの。入っていいわ。

イザベル:わーお…ヘレン。あんたがいれたの?

ヘレン :ええ。

イザベル:本当に?

ヘレン :私以外の誰がやるっていうの? まさか、この家に誰か他の人をいれたとでも?

イザベル:そりゃそうだけど、ちゃんと確認しておかなきゃ。だって、ずっと拒絶していただろ?

ヘレン :…そうだったわね。

イザベル:…わーお。

ヘレン :なによ。

イザベル:いやいやこれは驚くよ。自分で全部やったのかい? 1から10まで?

ヘレン :そうよ。

イザベル:どうやって。何かそういう所作をどこかで習ったのかい?

ヘレン :…あなたがやっているのを、こっそり見ていたの。

イザベル:うそ。

ヘレン :本当。

イザベル:全然気づかなかった。

ヘレン :でしょうね。夢中になっていたみたいだから。

イザベル:見よう見まねでやったっていうの?

ヘレン :…ちょっとだけ調べたわ。でも、あんまり参考にならなかったからあなたの作業を参考にしたわ。

イザベル:ヘレン。あんた才能あるよ。

ヘレン :褒められた気がしないわね。

イザベル:調べただけ、見ただけなのに1人で全部やってのけるなんて、才能としか言い様がない!

ヘレン :間違っているかもしれない。

イザベル:細かいことはあとで覚えたらいい!はは…あははは…あはははは!やった。やったじゃん、ヘレン!でかした!

ヘレン :何が?

イザベル:だってあんた、大仕事を1つこなしたんだよ? あははは。そんな気がしてたんだ! 今日のヘレンは何かおかしい。

ヘレン :悪かったわね、平然としていられなくて。

イザベル:いやいや! むしろ平然としている方だ。普通はもっとハイになる!

ヘレン :落ち込むんじゃなくて?

イザベル:どうして落ち込むことがあるんだ? こんなに素敵なことなのに!

ヘレン :…あなただけよ、そう思うのは。

イザベル:そうかい? でも、ヘレンだって少しはハイになっただろう?

ヘレン :ならなかったわよ。ちっとも、これっぽっちも。それにやってみてわかった。
     私には向かない。もう二度とやらないわ。

イザベル:ははは。大丈夫、すぐ癖になるから。これからはお風呂当番を決めなきゃならなくなる。

ヘレン :ならない。

イザベル:なる。断言していい。

ヘレン :…好きにしてちょうだい。

イザベル:好きにするさ。ああ、心配しなくても強要はしないから安心して。でも、手伝いが必要な時はいつでも言って。

ヘレン :必要が出てくる日が来たらね。

イザベル:そのうち来るよ。あんたはもうすでに覚えているはずだ。肉を切り裂く感覚。むせ返るような甘い血のにおい。
     それが今お風呂場に充満していると思うと…! ああ今日は何ていい日なんだ!! お風呂に入ってきていいかい?

ヘレン :だめ。ご飯を食べてからにして。

イザベル:もったいないじゃないか! いれたてが新鮮でいいんだ。放っておくと変色してしまう!
     どうしてそんなに焦らすんだ!……あ、そうか。デザートの変わりか。

ヘレン :そんなつもりはなかったんだけど…。

イザベル:いやいや。デザートと考えればこれは中々オツなものだ。よし、そうと決まればお風呂は後回しにしてまずは朝食だ!
     さぁ食べよういざ食べよう! すべての生き物に感謝して!

ヘレン :大げさね。

イザベル:ああそうだ。私の作業を見ていたということはもちろん、骨はとってあるんだろう?

ヘレン :…ええ。

イザベル:ははは。あとで加工してあげよう。開けるのは耳なんだっけ?右がいいかな。左がいいかな。

ヘレン :女性は右がいいって聞いたわ。

イザベル:じゃぁ右耳に。ファーストピアスだから、きれいに加工してあげるよ。

ヘレン :…痛くしないでね。

イザベル:ニードルで開けるからあまり痛くないよ。そのあとちゃんと消毒したら大丈夫。

ヘレン :わかったわ。

イザベル:…Happy Birthday、ヘレン。

ヘレン :おかしなこと言うのね。私の誕生日は今日じゃないわ。

イザベル:でも、今日新しいあんたが誕生した。

ヘレン :そして今日でその私は死ぬわね。

イザベル:死なないようにピアスを贈るよ。右の耳に1つ。それが次第に増えていくんだ。考えるだけでわくわくするね。

ヘレン :…誰かを殺すたびに、穴をあける。そこに通すのは死者の骨。とても、悪趣味ね。

イザベル:そうかい?

ヘレン :それに、前々から聞きたかったのだけど、血のお風呂って何なの? あなた、若返りたいの?
     信じているなら悪いけど、あれは迷信よ。

イザベル:ははは。そんなことくらい知っているさ。私はただ、自分の殺した相手に包まれたいだけだよ。
     さっきまで暖かく流れていた血がどんどん冷えていく。それを全身で味わいたいだけ。

ヘレン :…本当、悪趣味。

イザベル:今はまだヘレンにはわからないかもしれない。でも、いずれわかるようになる。
     だって君はもう、人殺しの快感を覚えているんだから!

ヘレン :…もうしないわ。

イザベル:ははは。ヘレンの否定は信用ならないよ。…改めておめでとう、ヘレン。ハッピィ、バァスディ…ははははは。





2015/5/2



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