色気のある話


智哉(ともや)♂
文学部部員。ちょっとうるさい。
どちらかというと運動部のように見えるけれど、根っからの本好き。葵とは幼い頃からの付き合い。

葵(あおい)不問
文学部部長。落ち着いているというか少しつかみどころがない。
常日頃から本を手放さないような典型的なタイプ。


※15分程度とは思いますが、テンポよくいくと10分程度で終わるかと。


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智哉:
葵:
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智哉:暇だなぁ。

葵 :そうか。

智哉:他の部活は結構見学者来てるみたいだなぁ。

葵 :・・・そうか。

智哉:まぁ文学部は人気ないって知ってはいるけどさぁ。見学者0っていうのはひどくね?

葵 :僕たちの時も見学者は僕と君しかいなかったじゃないか。

智哉:2人もいたんだよなぁ。

葵 :それはポジティブすぎやしないか?人気のない部活でも片手じゃ足りないくらいの人数は見学に来るだろう?

智哉:そうなのか?

葵 :そうらしいぞ。噂によると、オカルト研究会には毎年2桁の見学者がくるらしい。

智哉:あー、オカ研には俺も行ったな。

葵 :へぇ。君はオカルトに興味があるのかい?

智哉:まさか。怖いものみたさだよ。

葵 :それで、怖いものは見れたかい?

智哉:思っていたより怖くはなかったな。ああ、でもこれがいわゆる厨二病なんだなってのは見れたよ。

葵 :それは確かに、ある意味怖いものだな。将来的に黒歴史になる。

智哉:黒歴史?

葵 :あとで思い返して「うわあああああ」と身悶えることになるようなやつ。

智哉:そうなんだ?

葵 :君は黒歴史というものには無縁そうな人生だからわからないだろうけどね、そういうものなんだよ。

智哉:いやいや、俺にだってそういう過去くらいあるぞ。

葵 :ほう。それは興味があるな。

智哉:何に?

葵 :君の黒歴史というものに。

智哉:・・・言わないぞ?

葵 :フリかな?

智哉:フリじゃない。

葵 :フリだね。

智哉:絶対言わない。

葵 :僕と君の仲じゃないか、言ってくれたまえ。

智哉:どんな仲だよ。

葵 :生まれた日が1日違い。しかも同じ病院で生まれた上に、家が隣同士という奇跡の幼馴染。
   おかげさまで高校に至る今までほぼ毎日顔を合わせ過ごしたという仲。

智哉:腐れ縁ってやつだな。

葵 :そんな僕が知らない君の黒歴史というものに興味がある。

智哉:言わなきゃよかった・・・。

葵 :とても興味があるなぁ。

智哉:忘れろよこんな話。

葵 :非常に残念だ。

智哉:俺にだって、色々あるんだよ。

葵 :その色々が気になる。さらけ出してもらいたいんだがね。

智哉:言わないからな。

葵 :どうしても?

智哉:どうしても。

葵 :僕の黒歴史と引換でどうだい?

智哉:ちょっと気になるけど、その賭けは非常に危険な匂いがする。

葵 :そんなことない。どちらかというと僕の方がリスクは高いよ。

智哉:どうだか。

葵 :だって君は“黒歴史”がどんなものかよくわかっていないだろう?

智哉:要するに恥ずかしい過去ってことだよな?

葵 :まぁ、簡単に言うとそうだけどね。おそらく君の想像しているものと僕の想像しているものは違うと思うよ。

智哉:そうかぁ?そりゃ人それぞれ恥ずかしいのレベルはあると思うけど。

葵 :君はよくも悪くも普通だからね。
   僕は君と比べるとちょっと普通から外れているわけだし、君より恥ずかしい内容じゃないかな?

智哉:例えば?

葵 :君の情報と交換だ。

智哉:あ、そうだった。

葵 :交換してくれるかい?

智哉:・・・断る。

葵 :どうして。

智哉:どうしても。

葵 :そんなに言いたくない黒歴史なのか。

智哉:黒歴史というくらいだからな。

葵 :確かに。・・・いや、ますます気になるね。

智哉:言わないからな。

葵 :今日の君はとても頑なだね。どうしたんだい?あの頃の素直な君を思い出して。

智哉:守りたいラインくらい俺にもあるよ。

葵 :残念極まりない。

智哉:勝手に極まってろ。

葵 :極まっておこう。

智哉:・・・何の話から黒歴史の話に発展したんだっけ。

葵 :オカルト研究会への見学者が多い話だね。

智哉:それ、そうだ。何でこんなに話それてるんだよ。

葵 :君が出し惜しみをしているからだろう。

智哉:出し惜しみしているわけじゃない。出す気がないんだ。

葵 :思わせぶりなことを言っておきながら情報を公開しないなんてひどいと思うんだけどね。

智哉:それについては悪かったと思う。

葵 :そう思うなら黒歴史を教えてくれたまえ。

智哉:それとこれとは話が別だ。

葵 :至極残念だ。

智哉:ああまた話が戻ってる!なんだっけ、オカ研だっけ!?

葵 :そこに戻るとおそらくまた黒歴史の話になると思うが、それでいいかい?

智哉:それはよくない!

葵 :オカ研の話というか、一見人気がなさそうな部活でも見学者が多いという話だね。
   他にも茶道部も見学者は多いみたいだけれど、所属人数の少なさを考えると半分以上は冷やかしだろうね。

智哉:あー、茶道部は俺も行ったな。

葵 :お茶とお菓子目的か。

智哉:悔しいが正解。

葵 :そしてあのお茶の苦さとお菓子のぱさぱさした食感にびっくりする。

智哉:大正解だ。

葵 :大半がそうだろうね。部活という名目でお菓子が食べられるんだから。
   同じ理由で科学部も見学者が多いようだね。どうせ君は科学部も見学に行ったんだろう?

智哉:・・・行った。

葵 :予想通りだね。べっこうあめ目的か。

智哉:スライム作りも面白かったけどな。

葵 :どうして入らなかったんだい?

智哉:科学に興味があるわけじゃなかったからかなぁ。
   そういう遊びみたいなのは見学者引き込むためにやってるパフォーマンスなんだろうなって思って。

葵 :ほう。意外と冷静な判断。

智哉:実際騙されて入ったはいいけど、すぐ辞めるやつら結構いるしなー。

葵 :世の中そう甘くないということだね。

智哉:見学者の半分くらいでも入ってくれたら御の字なんだろうな。

葵 :しかしこうやって考えてみると、見学者のこないうちの部はこの学校で最も人気がない部活かもしれないね。

智哉:いやいや、隣の芝生は青いんだよ。よそはよそ、うちはうち。よそと比べるものじゃない。

葵 :ではこのまま見学者が来なくても構わないということかい?

智哉:それとこれでは話が別だ。

葵 :・・・君の話はさっきから支離滅裂なんだが大丈夫か?

智哉:大丈夫だ問題ない。

葵 :問題しかないようだね。

智哉:問題といえば、見学者だ!見学者0人は問題だろ?

葵 :見学者なしで入部者が・・・くるわけがないか。

智哉:そうだ。そして入部者がいなければ来年以降の存続にかかってくる。
   俺たちが卒業したあと誰もいなければ文学部は廃部だ。

葵 :ん・・・そう、だな。

智哉:時代の流れなんだろうけどなー。
   こんな暗くて具体的に何やってるかわからないような部活、入部しようなんて思う方が珍しい。

葵 :ということは僕と君は稀有な存在なんだね。

智哉:そうかもな。・・・あー、1人くらい冷やかしでもいいから来てくれないもんかねぇ。

葵 :冷やかしでいいのかい?

智哉:・・・だめだな。

葵 :純粋な入部希望者が見学に来てくれることを祈るしかないね。

智哉:来てくれるかな。

葵 :こればっかりは僕の口からは何とも言えない。

智哉:勧誘に行くか?

葵 :ポスターは貼ったし、新入生へ向けた部活動紹介も済ませてある。ほかにどうする?

智哉:ちらし配るとか。

葵 :君1人でどうぞ。

智哉:協力しろよ、部長だろ。

葵 :君が部長は嫌だというから必然的に僕が部長になっただけだよ。所詮形だけの部長さ。

智哉:そうだとしても、部長は部長だろ?

葵 :では、部長権限でチラシ配りは却下としよう。

智哉:おい。

葵 :何だい?

智哉:もうちょっと部長が新入生勧誘に意欲を出してもらわないと部員はついてこないぞ。

葵 :そうか。

智哉:そうだ。

葵 :面倒くさいな(ぼそっと)

智哉:おい。

葵 :何でもない。

智哉:このまま本当に新入部員0だったら来年廃部になるんだぞ、いいのか?

葵 :あー・・・そうだ。色気のある話をしよう。

智哉:は?何を藪から棒に。

葵 :例えばだ。

智哉:おい、無視かよ。

葵 :無視ではない。ひとまず僕の話を聞いてくれ。

智哉:・・・わかった。

葵 :素直でよろしい。・・・君の友人に宮脇君と山里君がいるな?

智哉:いるな。

葵 :2人はサッカー部だな?

智哉:そうだな。

葵 :そして同じ中学校を卒業している。

智哉:そうだが、何でわざわざ確認してるんだ?

葵 :これはとても大事なことだから。

智哉:あの2人が同じ部活で、同じ中学校を卒業しているってことがか?

葵 :そうだ。つまり、幼馴染というわけだな。

智哉:そういうことになるか。

葵 :そんな幼馴染の2人。中学校から同じ部活ともなると、仲もかなりいいだろう。
   さて、そんな2人が部室の中にいたとする。

智哉:同じ部活だからそういうこともあるだろうな。

葵 :ああ、そうだ。とても自然な流れだね。そんな2人のいる扉の前に立った君の耳に、中の声が少し聞こえてくる。
   「や、やめてよ宮脇君・・・」
   「いいじゃないか、これぐらい」
   「でも、宮脇君、太いし大きいから入らないよ!」

智哉:・・・何の話だ。

葵 :色気のある話さ。

智哉:何かがおかしい。

葵 :何もおかしくないさ。さて立ち聞きしている君は、当然いかがわしいことを考えるだろう。
   何せ部室という密室に2人っきりだ。これはまずい。

智哉:いかがわしいことって何だよ。

葵 :ご想像におまかせすることにしよう。

智哉:いや、確かに言っていることは怪しいかもしれないが、2人とも男だぞ。

葵 :わかっているさ。しかし中から怪しい会話は聞こえるんだ、想像しても仕方がない。

智哉:仕方がなくない。仕方なくない。

葵 :なくなくない。さてさて、中の様子が気になった君はさらに会話を聞こうと扉に近づく。
   中からは2人の会話がまだ聞こえてくる。
   「お、入ったじゃねぇか」
   「やめてよ、壊れちゃうよー!」

智哉:おいおい!別に2人はそういう仲じゃないぞ!!

葵 :そんなことはどうでもいい。そしてここで君は、意を決して扉をあける。

智哉:あけるなよ俺!!!

葵 :・・・ま、チビの山里君の腕時計を、ばかでかい宮脇君が奪った、というだけの話だよ。

智哉:あ、・・・そうか・・・そう、か・・・。

葵 :何を想像したんだい?

智哉:うるせー。お前が色気のある話をするとかいうから・・・いや、でもこれのどこが色気のある話なんだ?

葵 :これで色気を感じないとなると、もっと過激な話になるけど、いいかい?

智哉:いや、別に求めてるわけじゃないぞ。あと、宮脇と山里は怪しい関係ではないからな。

葵 :わかってるさ。

智哉:本当かよ・・・で、何で色気のある話なんて始めたんだ?

葵 :・・・智哉。うちの部活の話になるんだがね。どうして見学者がこないと思う?

智哉:何だよ、それさっきからずっと話してたじゃん。
   みんな興味がないってだけの話だろ?文化部だしある程度は仕方がないさ。

葵 :そうだね、確かに文学部はとても地味な部活だ。興味を抱く人もあまりいないだろう。
   だが、本が好きな人間は少なからずいる。そんな人物が冷やかしでもなく来ないのはなぜか。

智哉:本が好きなだけだったら図書委員になるからじゃないか。
   その方がわざわざ文学部に入部しなくても、好きなように本を読めるからね。

葵 :それも一理あるだろう。さて、智哉。ここで僕は重大なことを伝えなければならない。

智哉:何だよ改まって。

葵 :実はだね。・・・うっかり届けを出すのを忘れていたせいで、
   今年は文学部は部活として活動してないことになってるんだよ。

智哉:・・・は?

葵 :実に申し訳ない。なのでお詫びに色気のある話をしたというわけさ。

智哉:お詫びって・・・。

葵 :しかし君はもっと過激な内容を好んでいるようだ。けれど僕にはこれ以上の話はない。困ったものだね。

智哉:いや、それよりお前書類提出するの忘れたのかよ!あんだけ念押ししたのに!!

葵 :すまないね。

智哉:道理でポスター貼っててもはがされてるわけだよ・・・!!!
   あれは嫌がらせじゃなくて部活として認可されてないから先生がはがしたんだな!?

葵 :そういうことだな。ちなみに新入生への部活動紹介も、実は参加していない。

智哉:お前が1人で紹介に行くとかいうから怪しいと思っていたけどそういうことか!!

葵 :嘘をついていることが心苦しくてついここで告白してしまったよ。僕はどうも嘘をつくのが苦手なようだ。

智哉:どの口がそんなことを言ってんだよ!おい、書類を貸せ!ちょっと職員室に行ってくる!!

葵 :期限過ぎてるから無駄だと思うんだがね。


(紙を差し出す葵。それを受け取る智紀)


智哉:それでも行ってくるんだよ!!!このバカ!!!あとで覚えておけよ!!


(あわただしく扉があけられ飛び出していく智紀。葵は少しためいき)


葵 :ふむ・・・しかし、それにしても・・・自業自得とはいえ、暇だな。
   しょうがない。智哉のご期待に添えるようなもっと過激な色気のある話でも考えておくか。



2015/05/22



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