嘘をついたのは


アリア♀ 20代
妹を病的なまでに愛している。才色兼備で、欠点を見つける方が難しいような女性。
両親を病でなくしており、以降1人で妹を育てている。

アンジェ♀ 10代後半
姉と自分を比べ劣等感を抱く妹。少し短気なところがある。
姉を敵視しすぎて中々素直に慣れない。


※20分〜25分程度の台本ですが、間の取り方で前後すると思います。
※GLです。


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アリア:
アンジェ:
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アリア:私は、妹が大好きだ。
    生まれてくる前、お母さんから「あなたに妹ができるのよ」と言われた時の私の心の昂まり!
    あなたはきっと理解していないでしょうね。でも、本当に本当に私は、あなたのことが大好きなの。
    何もできなくていい。見た目の可愛さだってあなたには必要ないわ。あなたは今のままでいいの。
    嗚呼、可愛い私の妹。可愛い可愛い、私のアンジェ。


アンジェ:私は、姉のことが大嫌いだ。器量がよく、頭もいい。そしてとても面倒見がいい。
     天と地がひっくり返ってもこの姉には勝てないと、日々痛感している私の惨めさがあなたにわかる?
     家族だから、姉妹だからという理由だけでいつも引き合いに出されて比べられる私。
     アンジェ・・・天使なんてふざけた名前つけた両親をこれほどまでに恨んだことはないわ。
     嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い大嫌い。あなたなんて、大嫌い。



アンジェ:・・・ごちそうさま。

アリア:え?アンジェ、もういいの?全然食べてないじゃない!だめよ、朝ごはんはきちんと食べないと。

アンジェ:・・・お腹いっぱいなの。

アリア:嘘よ、これだけでお腹いっぱいになるわけないわ。あ、もしかしてお魚がいやだった?
    代わりにお肉を焼きましょうか?それとも、サラダをもう少し追加する?
    ああ、パンケーキを焼いてもいいわね。

アンジェ:やめてよ、お腹いっぱいだって言ってるでしょ!

アリア:全然食べてないじゃない。お腹すくわよ?

アンジェ:いいよ別に。

アリア:・・・もしかしてアンジェ、ダイエットしてるの?

アンジェ:・・・別に。

アリア:ダイエットなのね?そうなのね??

アンジェ:だったら何だっていうの?

アリア:だめよダイエットなんて。する必要ないわ。あなたはそのままでも十分痩せてるわよ?

アンジェ:あんたが言うな(ぼそっと)

アリア:え?何?

アンジェ:何でもない。別に私がダイエットしようがどうだっていいでしょう?

アリア:どうだってよくない。だって私は、あなたのことが心配なんだもの。
    あのね、ご飯を食べないダイエットは体にはよくないのよ?

アンジェ:私の体なんだし、お姉ちゃんには関係ないじゃん。

アリア:そんなことないわ!あなたは私の大切な妹なの。唯一の肉親よ?
    体の心配するに決まっているわ。
    お父さんたちみたいに体調悪くしてそのまま死んじゃったりしたら・・・。

アンジェ:・・・。

アリア:・・・ね?だから、ご飯はちゃんと食べましょう?

アンジェ:・・・自分の体のことくらい、自分で面倒みれる。

アリア:アンジェ!

アンジェ:放っておいてって言ってるのよ!!

アリア:アンジェどうしたの?そんなにイライラして。あ、もしかして生理かしら?

アンジェ:はあ!?何でそんなこと聞くの!?セクハラよ!!

アリア:だって、そんなにかりかりしちゃって・・・それならなおさらご飯しっかり食べなきゃだめよ!
    そうだ。今夜はちょっと鉄分がとれるようなご飯にするわね。

アンジェ:やめてよ、そんなんじゃないから!いいから放っておいてよ!!

アリア:そんなわけにはいかないわよ!

アンジェ:お姉ちゃんは過保護すぎるのよ!私をいくつだって思ってるの!?もう18よ!?子どもじゃない!
     そんなに何でもかんでも面倒みられなくったって、自分1人で出来るわ!

アリア:じゃぁ、アンジェはご飯作れるの?
    まだ学生だから働いて生活ができるだけのお金を稼ぐこともできないじゃない。

アンジェ:あのさ!この際だから言わせてもらうけど!
     お姉ちゃんがずっと私に包丁を握らせなかったんでしょう!?
     コンロを使うのだって、お姉ちゃんがいなきゃダメだって!何度もこのことで喧嘩したよね!?
     でもお姉ちゃんは全然分かってくれなかった!

アリア:だって、怪我したら大変だもの!アンジェはそそっかしいところあるから、心配なのよ!

アンジェ:怪我くらい何だっていうの!?死ぬわけじゃないし、それくらいどうってことないわよ!

アリア:もし深く切っちゃったらどうするの!?

アンジェ:そうやって学んでいくものでしょ!

アリア:そうだとしても、万が一があるじゃない!!指を切り落としたらどうするつもり!?

アンジェ:あーーーもうやめよう!?この話いっつも堂々巡り!どうせ私の意見聞いてくれないじゃない!

アリア:聞いてるわよ!聞いてないのはアンジェの方よ。
    私の言うことを何も受け入れてくれないわ。私の言っていることは何か間違ってる?

アンジェ:間違ってる間違ってないはどうでもいいの!!

アリア:よくない!間違ってるならまだしも、私の言うことは正しいでしょう?

アンジェ:正しいかもしれないけど、それは行き過ぎた心配性よ!

アリア:姉として当然だわ!唯一の肉親をこれ以上ないくらい心配して何が悪いの!?
    それに、子どもじゃないって言うならそんな駄々をこねてないで言うことを聞いてよ!

アンジェ:聞いてるわ!
    これ以上ないくらい聞いてる!私はお姉ちゃんのいうこと聞いて家事は何もしてないじゃない!
     それなのに何もできないとか言われて、私はどうしたらいいの!?
     できないんじゃなくて、そもそもさせてもらえてないだけよ!!

アリア:アンジェ・・・どうして私の気持ちをわかってくれないの?

アンジェ:分かってくれないのはお姉ちゃんの方だよ。・・・いってくる。

アリア:アンジェ!!

(アリアの呼びかけを無視してアンジェは出て行く。残されたアリアは家の中でうなだれる)



アリア:私は、妹が大好きだ。けれど妹は私のことを好きではないらしい。いつも喧嘩ばかりしている。
    本当は楽しい話をいっぱいしたい。まわりの姉妹がそうであるようにもっと仲良くしたい。
    けれど、私の言葉はいつも妹の神経を逆なでしてしまう。そんなつもりはないのに。
    ・・・どうして分かってくれないの、アンジェ。


アンジェ:私は、姉が大嫌いだ。けれど姉は私のことが好きで好きでたまらないらしい。いい迷惑だ。
     普通の姉妹のようにつかず離れずがちょうどいいのに、どうしてそれを理解してくれないのか。
     いくら言っても姉は聞き入れてくれない。この距離が少し離れれば、まだ仲良くできるのに。
     ・・・仲良くしたくないわけではないんだよ、お姉ちゃん。



(2人とも無言でご飯を食べている)

アンジェ:・・・。

アリア:・・・あの・・・。

アンジェ:・・・。

アリア:・・・アンジェ、えっと。

アンジェ:・・・何?

アリア:あの・・・今朝はごめんなさい。

アンジェ:何が。

アリア:つい言いすぎてしまったと思って。
    ごめんね、私がアンジェに何もさせていないのに、アンジェが何もできない子みたいな言い方しちゃった。
    私が手を出しすぎてるのよね、ごめん。

アンジェ:・・・どうして謝るの。

アリア:私が悪かったって思うから。

アンジェ:・・・お姉ちゃんだけじゃない。私も、悪かったと思う(歯切れ悪く)

アリア:アンジェ・・・!

アンジェ:強く言いすぎて、その・・・ごめんなさい。

アリア:いいの、アンジェは何も悪くない!私がちょっと過保護なのよね、それはよくわかっているのよ。
    本当はちゃんと気づいているんだけど、どうしてもやめられないの。

アンジェ:私だって、お姉ちゃんに強く当たりすぎてるってわかってる。ごめんね、お姉ちゃん。

アリア:アンジェは謝らないで!私が悪いんだから。

アンジェ:・・・何で、ここでも譲らないの?お互い様って笑って済ませられないの?

アリア:だって、アンジェは何も悪くないじゃない。私が必要以上に構いすぎちゃってるの。
    だからアンジェはイライラしちゃうんでしょう?ほら、私が悪いわ。

アンジェ:だからどうしてそうやって勝手の自己完結しちゃうの!?私と少しは話をしてよ!!

アリア:してるわよ!

アンジェ:してない!勝手に意見を押し付けてるだけよ!

アリア:そんなことないわ!

アンジェ:どうしてそうやってお姉ちゃんは私との会話を逃げるの!?
     せっかく勇気出してお姉ちゃんに近づこうとしたのに!!

アリア:アンジェ・・・それはとても嬉しいわ。

アンジェ:でもお姉ちゃんは、私と会話してくれないわ。

アリア:そんなことない!いっぱいおしゃべりしましょう?

アンジェ:今更もう喋ることなんてない!!

(椅子から立ち上がりどこかへ行くアンジェ)

アリア:アンジェ!?どこにいくの!

アンジェ:部屋!もう寝るの!!おやすみなさい!!

アリア:・・・アンジェ・・・ごめんなさい・・・本当に、ごめんなさい。



(寝ているアンジェの部屋にそっとアリアが入ってくる)

アリア:アンジェ?アンジェ、寝てるの?・・・寝てる。
    ・・・今日はごめんね、アンジェ。ついかっとなっちゃって。
    でも、本当に私はあなたのことが心配なの。
    説明はできないんだけど、とにかく心配で心配で仕方がなくて、つい口を挟んじゃうのね。
    ダメなお姉ちゃんでごめんね。だけど、わかってほしいの。
    ・・・私は本当にあなたが好きなのよ、アンジェ。
    ・・・いっそのこと、アンジェが・・・(少し笑って)そんなこと考えてはだめね。・・・でも・・・。

(そっと寝ているアンジェの首に手をかける。あまり力はこめていない)

アリア:・・・アンジェが死んでしまえば、そうしたら私は・・・。

(徐々に力をこめていく)

アンジェ:・・・ん。

アリア:!! ・・・私は、なんてことを・・・ごめんなさい、アンジェ・・・ごめんなさい。

(部屋から出ていくアリア。しばらくして、アンジェが起きる)

アンジェ:・・・お姉ちゃん・・・どうして・・・本当は、私のこと・・・。



アリア:私は、妹が大好きだ。好きで好きでたまらない。だから、私が支配したいと思ってしまう。
    妹の全てを私がコントロールしたい。好きだから、全てを手に入れたい。
    しかし私は、どこかで妹を憎んでいるのだろうか?だから、首に手をかけ殺そうとしたのだろうか。
    ・・・いいえ、違う。好きだから、手に入らないならいっそと・・・。
    本当に、好きなのアンジェ。わかって。


アンジェ:私は、姉が大嫌いだ。私のことを好きだとか言っているけれど、本当は恨んでいるんじゃないの?
     すぐさま家を出たいけれど、それができない自分がもどかしい。せめて関わってこなければいいのに。
     何もできない赤ちゃんなんかじゃない。どうして姉はそれをわかってくれないのか。
     早く自立して、こんな家なんか出て行ってやる。



アリア:ただいまー。・・・あれ?いい匂い・・・まさか、アンジェ!?
    (走って台所へ駆け込む)アンジェ!アンジェ!?

アンジェ:あ、お姉ちゃん・・・おかえり。

アリア:あなた、何してるの・・・?

アンジェ:ご飯作ってみたの。

アリア:あなたが?1人で?

アンジェ:そうよ、悪い?ほら、やけどもしていないし指も切り落とすどころか切ってすらいないわ。

アリア:本当に?どこも怪我してない?

アンジェ:(触れようとしたアリアの手を振り払って)やめて触らないで!・・・あっ

アリア:あ・・・えっと・・・お、おいしそうね!何を作ったのかなー?

アンジェ:あ、う、うん!えっと、まだ味見はできてないんだけど・・・野菜炒めと、チャーハンと、卵スープ。

アリア:わぁ、すごいじゃない!3品も作ったのね!

アンジェ:・・・食べてくれる?

アリア:ぜひいただくわ。じゃぁ・・・いただきます。

アンジェ:うん。

アリア:・・・。

アンジェ:・・・どう?

アリア:うん、すごくおいしいよ。初めて作ったのにすごいわ。さすがアンジェ。

アンジェ:本当?本当においしい?

アリア:本当よ?

アンジェ:・・・(1口食べる)ん!?げほげほっ・・・なにこれ、しょっぱいじゃない!

アリア:そんなにむせるほどじゃないわよ。

アンジェ:嘘言わないでよこんなの!・・・野菜炒めは!?・・・これも変な味する・・・。

アリア:変な味じゃなくて、キャベツの芯の味ね。ちょっと土の味がするかもしれないけど、そういうものよ。

アンジェ:卵スープも・・・からい・・・。

アリア:でも卵でいい感じになってるわよ?

アンジェ:・・・こんなの・・・おいしくないじゃない・・・!

アリア:そんなことないわ、とってもおいしい。それに、初めてに失敗はつきものよ?
    これから加減を知ればいいんだわ。上出来よ。

アンジェ:慰めはよしてよ!美味しくないなら最初から美味しくないって言えばよかったじゃない!何で嘘つくの!?

アリア:嘘じゃないの、本当においしいと思ったのよ。一生懸命アンジェが頑張った、素敵な味よ。

アンジェ:こんなに塩辛いのが!?こんなに土臭いのが!?美味しいっていうの!?頭おかしいんじゃない!?

アリア:そんなことない、本当よ。本当に美味しいと思ったのよ。
    あなたが作ったものだもの、美味しいに決まってるわ。

アンジェ:・・・やめて。

アリア:アンジェ?

アンジェ:もう、やめてよ・・・お姉ちゃん、私が好きだって嘘でしょう!?
     そんなに甘やかして、本当は私のことが嫌いなんだわ!
     嫌いだから甘やかして私をダメにしてるに決まってる!!

アリア:何をいってるの!?私はあなたが大好きよ、信じて。

アンジェ:嘘よ!だったらもっと厳しくするべきだわ!優しさだけが愛情表現なんておかしな話よ!!

アリア:厳しくだってしてるじゃない。甘やかしてばかりじゃないわ。

アンジェ:どうかしら。私が記憶している限り、お姉ちゃんは私に対して甘甘よ。激甘。
     ・・・嘘つき。私を好きだなんて大嘘。本当は嫌いなんでしょ!?

アリア:そんなことない!!

アンジェ:嘘つき!!嘘つき嘘つき嘘つき!!首を絞めたくせに!!!

アリア:!!あなた、起きていたの・・・?

アンジェ:そうよ!!好きなんて大嘘もいいところだったわ!!

アリア:アンジェ・・・違うのアンジェ、あれはあなたを本当に殺そうとたわけじゃなくて

アンジェ:(食い気味で)うるさい!!もう出て行ってやる!
     こんな家、出て行ってやる!!!(走って家から出て行く)

アリア:待って、アンジェ!アンジェ!・・・アンジェ・・・。



アリア:私は嘘なんかついてない・・・どうして、どうしてわかってくれないのアンジェ・・・。
    それともわかっていなかったのは私?
    こんなに嫌われてるなんて思わず仲良くしようとしていた私が悪いの?
    妹を手にしようとして、思わず手をかけそうになったから?・・・そうよね、そんな姉は嫌よね。
    アンジェにとっては最初から私が迷惑だったのかしら・・・ごめんなさい、アンジェ。
    本当にごめんなさい・・・。



アンジェ:(姉と喧嘩して家を飛び出してから、1週間ちょっと私は友達の家を渡り歩いた。
     ――そして、姉の訃報を聞く。

     事故だったと聞いた。車にはねられ死んだのだと。けれど私は、自殺だったのではないかと思っている。
     姉は間違いなく私が大好きだった。最後に見た、あの傷ついた顔が忘れられない。
     姉は嘘などついてなかった。私のことが好きで好きでたまらなかった。
     ――そう、嘘をついたのは)



(アリアの葬儀。1人、アンジェはアリアの棺の前に座っている)

アンジェ:・・・死んでも綺麗だなんて、ずるいわお姉ちゃん。全然かなわない。本当に綺麗ね、お姉ちゃん・・・。
     私ね、ずっと黙っていたことがあるの。本当はね、私・・・お姉ちゃんのこと、大好きだったよ。
     綺麗で何でもできる。その上、1歩後ろでついてくるような慎ましいお姉ちゃん。
     そんなお姉ちゃんは私の自慢だった。大好き。大好きなお姉ちゃん。
     それに比べて何もできない劣等種の私。
     私に触れてお姉ちゃんが汚れてほしくなくて、つい避けちゃった。ごめんね。
     でも、お姉ちゃんの傷ついた顔もとっても綺麗だったよ。
     (そっとアリアに触れる)ああ、冷たい・・・本当に死んでしまったのね、お姉ちゃん。
     でもそんなお姉ちゃんも素敵。綺麗よお姉ちゃん。思わずキスしたいくらい。
     死体には病原体がいっぱいなんですって。でも、お姉ちゃんの菌なら共有したいくらいよ。(リップ音)
     ふふ・・・ふふふ・・・うふふふ。お姉ちゃん、だぁーいすき。



2015/4/13



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