首吊り少女


青年(♂)
探偵事務所の所長。仕事以外のことはたいていおろそかになる面倒くさがり。色白細身。

少年(不問)
探偵事務所の所員。主に青年の身の回りのお世話をしている。世話焼き。

少女(♀)
依頼人の少女。家に幽霊が出るとのことだが。

A(不問)
通行人。

B(不問)
通行人。


※1:1:1で演じられる場合は、AとBは青年役の方と少年役の方が被るとよいかと。

※台本の時間は10分前後です。


-----------------------------------------
青年:
少年:
少女:
A:
B:
-----------------------------------------



A :――ねぇ、こんな話知ってる?街外れの洋館に、出るんだって。

少女:出る?

B :何がでるんだよ。

A :そりゃ出るっていったら1つしかないでしょう?幽霊だよ、幽霊!

B :まだそんなの信じてるのか?ばかばかしい

A :えー?もしかして幽霊とか信じてない派?

B :あんまり信じてないな。

A :えー!?

少女:私は信じてるよ。

B :信じろっていっても見たことないからなぁ・・・自分の目に見えないものは信じない。

A :うわ、現実主義!でも、見たって人多いよ?首をつった女の子の幽霊。

少女:首を吊った女の子?

B :首を吊った女の子ねぇ。

A :これを言っても信じてくれないのかぁ。

B :いやだから、俺が見てないんだから信じられないって。

A :あんたはみてなくても見た人が多いんだから、いるってことじゃない?

B :そうかぁ?

少女:私の家、街外れにあるけど、みたことないよ。

B :俺の家だって街はずれにあるけど、幽霊なんてみたことないぞ。

A :よくみてないんじゃない?

B :よくみたら見えるもんなのかよ、幽霊って(笑いながら)

少女:うふふ。

A :あ、笑ったなー!今度一緒にいって確かめようよ。

B :はいはい今度な。ほら、早く行くぞ。時間に遅れる。

少女:あ・・・いっちゃった・・・私も帰ろうかな。





少女:(タイトルコール)首吊り少女





少年:あー・・・えーっと・・・お茶、おいておきますね。

青年:ありがとう。

少女:あ、ありがとうございます・・・どうぞお構いなく。

青年:いやいや、大事な依頼人だからね。遠慮せず飲んでくれ。このお茶菓子もね、中々美味しいんだよ。

少女:えっと・・・じゃぁ、いただきます。

少年:俺はどうしたらいいですか?

青年:君の好きにしてくれていいよ。ここで話を聞いていてもいいし、奥で事務処理をしていてもいい。

少年:えーっと・・・じゃぁ、ここにいますね、一応。

青年:わかったよ。
   (少女に向き直って)それじゃぁ改めて、依頼内容を聞いてもいいかな?

少女:あ、はい・・・その、私の家に出るらしいんです。

青年:出る、とは?

少女:幽霊です。

青年:ほう・・・幽霊が出るんですか。

少年:え!?幽霊が出るんですか!?

青年:繰り返し確認しなくてもよろしい。あなたの家に幽霊が出る。それにあなたが困っている。
   ということは今回の依頼はその幽霊を退治してほしい、ということでしょうか?

少女:そう、ですね・・・ただ、私はその幽霊を見たことがないんです。

青年:ん?どういうことでしょう。あなたの家に幽霊が出るから、あなたが困っているんじゃないんですか?

少女:えっと、あの・・・街外れの洋館に幽霊が出るという噂話を聞いたことはありませんか?

青年:街外れの洋館というと、あの大きな屋敷のことだね?僕はその噂を聞いたことがないけれど・・・。
   君はどうだい?街外れの洋館に幽霊が出るなんて話、聞いたことがあるかい?

少年:ああ、最近噂になってるやつですね!首を吊った少女の幽霊が出るって話ですよ。
   結構有名な話だと思うんですけど、先生知らなかったんですか?

青年:あまり外のことに興味がないからね。

少年:そうやって事務所に引きこもってばっかりいるから、先生は色白で細いんですよ!まるでもやしじゃないですか!
   仕事以外の時も、もうちょっと外に出たらどうなんですか!?まったくもう!

青年:君のお小言は聞き飽きたよ・・・それにほら、依頼人の前だよ。もう少し静かにしたらどうなんだね?

少年:あ、すみません。

少女:ふふ。仲がいいんですね。

青年:そうかい?見ての通り、小言の多いやつでね。いつもいつも僕に説教ばかりたれているよ。
   「先生」と呼んでくれるなら、態度にも表して欲しいものだね。もうちょっと敬っていいと思うんだけど。

少年:せんせー?何か言いましたか?

青年:何も。さて、話が脱線してしまったね。
   つまり、あなたは見たことがないが、あなたの家に幽霊が出るという噂があると。
   もしかしてあなたは、幽霊に困っているというよりその噂に困っているのかね?

少女:はい、そうです・・・私の知らないところで話が広がっていることが何か気持ち悪くて。
   その幽霊の正体を暴いて欲しいんです。もし本当に幽霊がいるのなら、退治も・・・。
   って、ここはお祓いまでしてくれるようなところではないですよね。すみません。
   幽霊がいるかどうか、それを調べていただければそれで結構です。どうか、よろしくお願いします。

青年:幽霊の正体を調べる、かぁ・・・ふむ、そうだねぇ。

少年:先生・・・。

少女:やはりそういった依頼は難しいでしょうか?

青年:いや、そうだね・・・幽霊の正体を暴くことがあなたの依頼なら、それはすぐ叶えてあげることができるよ。

少女:え、本当ですか!?

青年:ああ。・・・いくつかあなたに質問をしよう。あなたは、本当に幽霊を見たことがないんだね?

少女:はい。気配すら感じたことはありません。

青年:では、あなたのご家族は?あなた以外の人で幽霊を見たという人はいないのかね?

少女:あの・・・私、1人で住んでいるんです。家族はいません。

青年:ほう?いつから1人暮しをしているんだね?

少女:・・・いつ・・・から・・・。

青年:どうかしましたか?

少女:・・・いつから・・・1人なんでしょう・・・私・・・。

青年:思い出せないかな?

少女:思い出せないはずはないんです・・・だって、自分のことなのに・・・あれ?・・・あれ・・・。

青年:ふうん。では別の質問をしようか。あなたの家に首を吊った少女の霊が出るという噂がある。
   その噂の洋館は、本当にあなたの家かな?

少女:えっと、そうだと思います。ほかの噂もいくつか聞きましたが、それらに当てはまるのは私の家だけかと。

青年:そうですか。では、最後の質問をしましょう。
   ――あなたの首に巻きついているそれは何ですか?

少女:え?首?

青年:ええ。あなたの首に、巻きついていますよ。「縄」が。

少女:・・・え、何言っているんですか?そんなわけ・・・。

青年:気づいていないんですか。あなた、ずっと縄を引きずって歩いていましたよ。

少女:嘘・・・嘘よ・・・。

青年:何なら鏡をお持ちいたしましょうか?・・・君、手鏡か何かを持ってきてくれ。

少年:あ、はい!わかりました。

少女:私が幽霊なんてそんな・・・そんなことない・・・だって私は生きているわ・・・。

青年:そう思うんでしたらどうぞ、首を触ってみてください。

少女:・・・うそよ・・・。

青年:触ってみればわかりますよ。どうしたんですか?触らないんですか?

少女:からかわないでください。怒りますよ。

青年:どうぞ。けれどその前に、首を触ってみてください。そうすればすべてわかりますよ。

少女:・・・そんなはずない・・・首に縄なんて・・・悪い冗談よ。

少年:あの、先生・・・鏡です。

青年:ありがとう。・・・さぁ、みてごらん。あなたの首には太い縄が巻きついているよ。

少女:・・・っ!ぁ・・・私・・・し ん で た ん だ っ け 。



青年:やはり死んでいたことに気づいていなかったのか。気づけば消えるものなのだな。なるほど。

少年:えっと、先生?依頼人は?

青年:消えてしまったよ。成仏したのかどうかはわからないけどね。

少年:そうですか・・・はぁーーー。幽霊の依頼人なんて初めてでしたね!びっくりしました!
   俺には見えていなかったのが残念ですけど。先生って見える人だったんですね。いいなー。

青年:僕だって幽霊なんて初めてみたよ。それに、見えるなんていいことではないね。

少年:そうなんですか?

青年:想像してごらん?首に縄を巻きつけた、いわば死体だよ。
   そもそも首吊り死体というのは、ありとあらゆるところからいろんなものが漏れ出していて綺麗なものではない。
   その上、彼女は見つけてもらうまでに時間がかかったのかもしれないね。少し腐れていたよ。
   そんな状態、君はみたいと思うかい?

少年:・・・おえっ。想像して気持ち悪くなりました・・・。

青年:そうだね。僕もちょっと疲れたよ。今日は休みにしよう。戸締りをして、帰っていいよ。

少年:はーい。じゃぁ、お疲れ様でした。

青年:ああ、お疲れ様。



A :そういえばさっきの話には続きがあるんだ。

B :何?まだ続くの?

A :その首吊りの女の子、自分が死んだことに気づいてないんだって。

B :へー。

A :怖くない?

B :全然。

A :つまんないなー。



少女:――そんな話、知ってますか?



2014/10/20



戻る