Wonder ground world


メアリ(♀)
アリスたちのもとへ迷い込んできた少女。元気。前向き。

アリス(♀)
不思議の国の住人。人間を見ることができない。

女王(♀)
不思議の国の住人。穏やかにアリスを見守る、母親的な存在。

帽子屋(♂)
不思議の国の住人。物腰穏やかな紳士。

白うさぎ(♂)
不思議の国の住人。少々抜けているところのある青年。

眠りねずみ(不問)
不思議の国の住人。常に眠い。あちこちで寝ていることが多い。

役人(不問)
とある街にいる役人。嫌な奴。

N(不問)
ナレーション。


※役人は眠りねずみと、Nは帽子屋の方がかぶるとよいかと。
※台本の時間は40分前後くらいです。
※配役の性別は変えてくださっても結構です。


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メアリ:
アリス:
女王:
帽子屋:
白うさぎ:
眠りねずみ:

N:
役人:
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N    :ここは、果ての無い広大な世界にある、名前もない小さな国。
      アリスは一人で、小さな国の小さな町にある、小さな家に住んでいました。
      どうして一人なのかは、アリスにも分かりません。
      お父さんやお母さんがいたような気もするのですが、気がついたら一人でそこにいたのです。
      でも、アリスはちっとも寂しくありませんでした。なぜなら、大切な「仲間」がいたからです。



アリス  :おはよう、皆。

帽子屋  :おはようアリス。

女王   :ご機嫌いかが?

白うさぎ :早く身支度をして、パーティーへ出掛けますよ。

眠りねずみ:今日は普通の日をお祝いするんだ。

アリス  :あら、また普通の日をお祝いするの?

帽子屋  :そうとも。普通の日程素晴らしい日はない!

女王   :いつもと同じ暖かい朝日。

白うさぎ :いつもと同じ美味しい朝食。

眠りねずみ:いつもと同じ仲間達。

アリス  :いつもと同じ・・・素敵な日常!



アリス  :帽子屋はいっつもお茶会のアイディアで頭がいっぱい。

帽子屋  :ティーパーティーを開く事が私の仕事。
      朝の目覚め記念パーティー、小鳥が今日も美しくさえずっている記念パーティー、
      アリスの鼻歌がうまくなった記念パーティー。

アリス  :この前のパーティー、面白くて私大好きだったの。えっと、何だったかしら・・・。

帽子屋  :白うさぎが五分遅刻して失神した記念パーティー。

アリス  :そう!時間に間に合わなかったのはあれが初めてだったわね。
      ね、毎日時計の針に追われる白うさぎさん。

白うさぎ :あれは、時計の奴がしくじったんですよ。

アリス  :遅刻した時の事?

白うさぎ :ええ。この前、時計のやつのマフィンを横取りしたのがばれたんです。それでやつは怒って時間を止めた。

アリス  :貴方の時計はマフィンが好物?

白うさぎ :焼きたてのふわふわが大好物なんですが・・・何せマフィンを焼いてくれる方も気まぐれですから。

アリス  :でも、貴女が気まぐれで焼いてくれるマフィンは、いつもとってもおいしいわ、女王様。

女王   :ありがとう、アリス。でも私、気まぐれなんかじゃないのよ?

アリス  :あら?だって、パーティーのときも気分次第で焼いたり焼かなかったりするじゃない。

女王   :あれは私の気分じゃないの。オーブンが乗り気じゃないだけ。

アリス  :まさか!いくらオーブンでも、女王様の命令には従うべきよ。

女王   :それ、オーブンに伝えてもらえる?あと、たまにオーブンの中で居眠りしてる奴にもね。

アリス  :ふふふ。今日はまだ起きてるのね?眠りねずみさん。

眠りねずみ:まだ、アリスとお話してなかったから。

アリス  :ありがとう。それと、オーブンの中で暖をとるのは止めた方がよさそう。

眠りねずみ:え・・・?あそこが一番ぽかぽかするのに?

アリス  :女王様のマフィンが食べたかったら、ね。

眠ねずみ :・・・何処か他に、暖かい所がある?

アリス  :そうね・・・二階のテラスなんてどう?私が毛布を貸してあげるから。

眠ねずみ :ありがとう、アリス。きっと良い夢が見られるよ。



アリス  :いつもと同じ暖かい朝日、いつもと同じ美味しい朝食、いつもと同じ仲間達。
      いつもと同じ・・・素敵な、日常。



眠りねずみ:でも、それで幸せ?

アリス  :・・・ええ、幸せよ。




N    :こうしてアリスは、仲間と共にいつもと同じ日々を、楽しく過ごしていました。
      そんなある日、アリスと仲間達の家に女性が一人、迷い込んできたのです。




メアリ  :すいませーん。あの、どなたかいらっしゃいませんか?道聞きたいんですけどー。
      あのー!あのー!!・・・誰もいないのかな・・・まずい。絶対迷った、これは。

眠りねずみ:誰?泥棒?

メアリ  :うわ!・・・何だ、脅かさないでよー・・・って!人!いつからここに!?

眠りねずみ:え?そうだなぁ・・・半日ぐらい前?

メアリ  :半日!?・・・あれ?私さっき呼びかけましたよね?

眠りねずみ:あー・・・寝てたんじゃないかな、きっと。この庭は日当たりがよくてついうとうとしちゃうんだ。

メアリ  :もう夜ですよ?

眠りねずみ:あれ?そうなの?どうりで空が暗いと思ったよ。

メアリ  :・・・分かりました。百歩譲って水に流しましょう。
      あのですね、実は私、道に迷ってしまって困っているんですよ。

眠りねずみ:それはお気の毒に。ふぁー・・・。

メアリ  :・・・すいませーん、誰かいらっしゃいませんかー?まともな方いませんかー!?


(無言でアリスがたっている。それに気づくメアリ)


メアリ  :あ、よかった!あの、ごめんなさい。私道に迷ってしま・・・

アリス  :(メアリの声を遮って)眠りねずみさん、こんばんは。まだ起きてたの?

眠りねずみ:やあアリス。こんばんは。今起きたんだよ。

メアリ  :え?あの、ちょっと・・・。

アリス  :こんなところで寝ていると風邪を引いてしまうわ。それに、夜更かしも体に障るわよ。

眠りねずみ:うん、そろそろ家の中に入るよ。

女王   :そういう貴方もね、アリス。どうしたの?眠れないの?

アリス  :女王様もこんばんは。何か物音がしたようだったから見に来たの。

女王   :あらそう?何かし・・・


(女王、メアリに気づく)


メアリ  :あ、あの!

女王   :・・・きっと風の音ね。戸締りを確認しておくわ。

アリス  :ええ、ありがとう。

女王   :さ、もう寝ましょう?また明日、アリス。

アリス  :いい夢を。

女王   :いい夢を。

眠りねずみ:おやすみ、アリス。

メアリ  :・・・完全に蚊帳の外。

女王   :・・・で、何の御用かしら?此処は宿屋ではないわよ?

メアリ  :あ、あの!私、道に迷ってしまったんです。

女王   :どこに向かっていたのかしら。

メアリ  :今日泊まるはずだった宿が・・・ええと、セントラルにあるんですけど・・・。

女王   :セントラル?ここから3日はかかるわ。

メアリ  :え!?3日って!

帽子屋  :そうだね、この先の山を越えてその先の大河を渡り
      そのまた向こうの谷を越え海を越えた先がセントラルだよ。

メアリ  :海渡っちゃうんだ・・・どうしよう、私カナヅチなんです。

帽子屋  :心配いらないさ、私が浮き輪を貸してあげよう。

メアリ  :・・・それは、どうも。

白うさぎ :それよりも、この丘を下った所に港があります。定期船に乗れば1日掛かりません。

メアリ  :本当!?助かりましたありがとう!

眠りねずみ:定期船が来るのは1週間に1度だけど。

メアリ  :・・・今日出発したばかりと言うオチはないですよね・・・?

帽子屋  :残念ながらそれはないですね。

メアリ  :よかったー。

眠りねずみ:でも一昨日きたよ、定期船。

メアリ  :・・・え?今のぬか喜び?

白うさぎ :物資を沢山積み込んで、一昨日の夜遅くに港を離れていきました。

女王   :そういえばそうだったわね。ということはとりあえず宿無しな訳ね、あなた。

メアリ  :そんな・・・。

白うさぎ :もう夜も更けてまいりましたし、もし良かったら泊まっていかれますか?どうするかは明日考えては?

帽子屋  :白ウサギ!

白うさぎ :!! ・・・すいません。でも、女性が1人で野宿というのはかわいそうで・・・。

帽子屋  :だからといって、ここに泊めるというのは無理な話だろう。よく考えてからものを言いなさい。

女王   :いいじゃない別に。次の船がくるまで此処にいても。

帽子屋  :女王まで何を言い出すんですか・・・。

眠りねずみ:でも、人数は増えた方が楽しいよ。

帽子屋  :眠りねずみ、お前もか。

女王   :でも、やらなければならない事は山積みなんだもの。人手はあれば嬉しいわ。
      定期船を待つ間、宿を提供する代わりに手伝うって事でどうかしら?

メアリ  :いいんですか!?ありがとうございます!

帽子屋  :はぁ・・・もう私は知らないですからね。ところであなた、名前は?

メアリ  :あ、ごめんなさい・・・私の名前はメアリ。
      ここから陸続きになっている国から歩いて旅をしてきたんだけど・・・どうも方向音痴で。

女王   :そうでしょうね。ここからとっても遠い所にあるもの、目的の場所は。

白うさぎ :さて、私達もメアリに自己紹介が必要ですよね?初めまして、メアリ。私は白ウサギ。

女王   :赤の女王よ。

帽子屋  :帽子屋と呼ばれています。

眠りねずみ:眠りねずみ。

メアリ  :白ウサギに、女王に帽子屋、眠りねずみ・・・さっきの女の子はもしかして・・・。
      不思議の国の、アリス?

帽子屋  :ご名答。

メアリ  :ご名答って・・・わざとそういう名前を付けているの?

白うさぎ :付けているのではありません。元々、そういう名前なんです。

女王   :そう。私たちはアリスが作り出した不思議の世界の住人なの。

帽子屋  :私たち自身が、御伽話なんですよ。

眠りねずみ:アリスの為だけにいる、近いようで遠い存在。

白うさぎ :・・・アリスには、人間が見えないんです。

メアリ  :だから、さっき私は無視をされたの?

女王   :そうね・・・アリスは人間に愛されたいのに愛されない・・・。
      そもそも人間の声も聞こえなければ姿も見えない、可哀想な子なの。

帽子屋  :だからメアリには、アリスに見つからないような家事を頼むよ。私たちじゃないと、アリスとは話せない。

メアリ  :分かった。でも、どうしてアリスはそうなってしまったの?

女王   :そうね・・・どうしてこうなってしまうのかしら・・・。
      いえ、何でもないわ。貴女もお疲れでしょう?白ウサギ、空いているお部屋にベッドを用意してあげて。

白うさぎ :かしこまりました。さぁメアリ。こちらへどうぞ

メアリ  :え、あ・・・おやすみなさい!


(メアリを引き連れて白うさぎが去っていく)


帽子屋  :どうしてこんな事に・・・なんて、あなたらしくない。

女王   :そうかしら・・・何が私らしいかなんて、もう分からなくなってしまったわ。

帽子屋  :少なくとも、女王様らしくはないですよ。

女王   :・・・そうだったわね。私は女王様なのよね。赤の女王・・・アリスだけの女王様。

眠りねずみ:皆一緒。皆アリスの為にした事。そうでしょ?

女王   :そう・・・それが一番の方法だと思っていた・・・アリスにとっても、私達にとっても。

白うさぎ :・・・メアリを部屋に案内してきました。

女王   :ご苦労様。きちんと約束してきた?

白うさぎ :ええ。夜が明けたら、許可があるまで部屋を出ないように言い含めました。
      それと、アリスの部屋の近くには近づかないようにと。

帽子屋  :約束・・・はて、約束は破る為にあるのでは?

女王   :それは貴方だけ。メアリはきっと、きちんと守ってくれる。

眠りねずみ:でも、どこかできっと。

女王   :・・・そうね、破ってほしいと願っている。




N    :こうして不思議な四人組と出会ったメアリは、不思議の国の住人を名乗る彼らと生活を始めました。
      メアリは、彼らが話してくれる不思議の世界の話が大好きでした。
      まるで本当のおとぎ話のようで、何度聞いても飽きないのです。
      ですがメアリには一つだけ、どうしても気に掛かっている事がありました。アリスの事です。
      彼らはアリスの話をあまりしたがらなかったのです。アリスはいつも二階の部屋にこもりきり。
      相変わらずメアリが見えていない様子。
      そしてメアリの気掛かりは解消されないまま、更に幾日かが過ぎました。




メアリ  :・・・よし、掃除終わり!・・・にしても、アリスはどうして私が見えないんだろ。
      みんなが空想の世界の住人だって、本当?・・・いや、さすがにそれは嘘ね。
      だって普通に会話ができるし、触れることもできるもの。
      じゃぁアリスって何なのかしら・・・。

白うさぎ :メアリ、おはようございます。

メアリ  :あ、おはよう白うさぎさん。・・・あれ?他のみんなは?

白うさぎ :え!?ええと・・・あ、不思議の世界に帰ってるんじゃないでしょうかね!?

メアリ  :すごいオーバーリアクションな動揺。

白うさぎ :とにかく、アリスの元へ帰っているんですよ!ここにはいません!

メアリ  :ふーん・・・ね、ちょっと聞いてもいい?アリスって一人なの?親は?

白うさぎ :アリスのお母さんは早くに亡くなって・・・お父さんは、行方不明なんです。

メアリ  :行方不明?

白うさぎ :あっ・・・それ以上の事は、私の口からは言えません!

メアリ  :すっごい感じ悪い。そこまで言ったなら全部教えてくれたっていいじゃない!

白うさぎ :そんな事言われても、後で帽子屋さんに怒られるのは私なんですから!

メアリ  :なるほど。怒られる程言えないような理由で行方不明なんだ。

白うさぎ :・・・誘導尋問、ですか・・・?

メアリ  :勝手に引っかかったんじゃん。じゃあ、もうちょっと素朴な疑問にする。
      この家ってさ、生活費どうしてんの?

白うさぎ :・・・!?

メアリ  :え?そんな驚くような事言った?当然の疑問だと思うんだけど。

白うさぎ :いや、その・・・あ、アリスのご両親が大金持ちだったとか!

メアリ  :そうなの?

白うさぎ :え・・・じゃあ、お爺さんが大金持ちとか!

メアリ  :だから、そうなの?

白うさぎ :・・・アリスは王様の子供で、ここにひっそりと匿われてる、とか・・・。

メアリ  :光の速さで墓穴掘ってるけど大丈夫?

白うさぎ :いや、あの、その・・・。


(がやがやと奥から3人がやってくる)


帽子屋  :いやぁ、今日のお客さんは気前よかったな!

女王   :本当よねぇ、チップもこんなに弾んでもらっちゃったし。

帽子屋  :とりあえずお前の踊りと歌で暫くは繋げそうだ。

女王   :後は眠りねずみと白うさぎが早いとこ曲芸覚えてくれれば、
      ウチの一座も華やぐし一層稼ぎが安定するわね。

帽子屋  :白うさぎは特に不器用だからなぁ。まぁ、しばらくは俺たちが客は呼べるからなんとかなるだろう!

眠りねずみ:・・・あのさぁ。

女王   :あら何よ、眠りねずみ。もしかしてもう眠いの?まったくアンタはお子様なんだから。

眠りねずみ:・・・一座の話ってさぁ、メアリに内緒の話、だよね?

女王   :そうだけど?

眠りねずみ:えっとー・・・。

女王   :(メアリに気づく)・・・め、メアリ!どうしたのこんな所で!?
      あ、そうだ今日は特別に私がマフィン焼いてあげよっか?ね?

帽子屋  :そういやどっかにこの前買ったワインがあったろ。な、白ウサギ?

白うさぎ :あの、帽子屋さん・・・言葉遣い、戻っちゃってます・・・。

一同   :・・・。

眠りねずみ:・・・バレちゃったんならしょうがない!改めてよろしくメアリ!僕は眠りねずみのねずちゃん!

メアリ  :全然キャラ違うし・・・。

女王   :・・・はぁ。仕方ないわね、これが真相よ。

メアリ  :やっぱり、空想の世界の住人っていうのは嘘なのね?

帽子屋  :俺達やメアリにとっては嘘だ。でも、アリスにとっちゃ全て真実なんだよ。

メアリ  :貴方たち、本当は誰?

女王   :アタイ達は、国から国を移動する旅の一座。街角で歌や曲芸を披露して、お金を稼ぐの。
      だからメアリに話した事、全てが嘘って訳じゃないわ。

白うさぎ :旅先で起こった不思議な事件や変わった風習・・・それを纏めて一つの物語にしたんです。

帽子屋  :その寸劇の演目が「アリスの不思議な国」って名前なんだよ。

メアリ  :じゃあ、貴方たちはその演目のキャラクターをずっと演じ続けてるって事?

眠りねずみ:簡単に言うとそう。

メアリ  :何でそんな事してるの?わざわざ自分を偽る必要ないじゃない。

眠りねずみ:・・・アリスを、悲しませたくなかった・・・っていうか、さ。

メアリ  :なるほど。アリスが関係していることは嘘ではないわけね。

帽子屋  :ここから先の事情は、彼女の許可なしに話すわけにいかない。

白うさぎ :そうですね。でもアリスは、私達以外と話そうとはしてくれません。
      許可をとるなんて無理な話ですね・・・。

女王   :・・・本当は、また昔みたいに笑ってほしいけど、アリスの笑顔は今もまだ作り物のまま。

メアリ  :・・・だったら、何とかしようよ。
      私、アリスと話せるようになりたい。みんなだってそうでしょ?

眠りねずみ:僕達は話してるよ?

メアリ  :人間として、だよ。物語のキャラクターで本当にいいの?
      理由は解らないけど、とにかく皆はアリスが大切なんでしょ?じゃあ、伝えなきゃ。

帽子屋  :傷つけたくないんだ、これ以上。彼女はもう十分苦しんでる。

眠りねずみ:大切だから、傷ついてほしくないんだ。

メアリ  :・・・じゃあ、私だけでも普通に話せるように努力してみる。
      だって、私は物語の登場人物なんかじゃない。イレギュラーな存在なんだもの。

眠りねずみ:変な子だね、君って。とっても変わってる。

メアリ  :皆だって本当は、自分の中に閉じこもったアリスを助けたいんでしょ?本当の笑顔見たいんでしょ?
      だから女王様は私にここで暮らすように言った。そうでしょう?

女王   :・・・さぁね。どうだったかしら。

帽子屋  :おや、メアリをここに置くことをすすめたのは、そういうことか。
      イレギュラーな存在・・・確かに確かに。しかし、それでいい方向に向かうといいんだけどねぇ。

眠りねずみ:ねー、何かうまい事まとまってきたみたいだし、この辺りでご飯にしない?

白うさぎ :・・・そう、ですね。じゃあ、私は支度をしてきます!

眠りねずみ:僕も手伝うよー。


(眠りねずみと白うさぎがキッチンへ去っていく)


帽子屋  :・・・お前のお陰で何かが起こりそうな予感がするよ、メアリ。何か、とてもいい予感だ。

メアリ  :そうかな・・・でしゃばりすぎてない?私。

女王   :そんな事ない。言いだしっぺのアンタがそんなんでどうすんのよ。

帽子屋  :ところで、助けるって一体どうするつもりなんだ?

メアリ  :とにかく当たって砕けるしかないんじゃない?・・・あ、いい匂いしてきた!私も手伝ってくるね!


(メアリもキッチンへ向かう)


帽子屋  :思っていたよりノープランだな・・・大丈夫か?

女王   :でも、きっと何もしないで見守ってるより何倍もましね。
      ・・・また、一座の皆でご飯食べに行けるかしら。

帽子屋  :その時は、座長も一緒に・・・なんて、ムシのいい話はないよな・・・。

女王   :そうね・・・。



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ニコ生で枠をわけて上演する際は、ここで分けるといいかもです。

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N    :道に迷ってしまったメアリ。
      その道中で出会ったのは「不思議の国のアリス」を演じる奇妙な旅の一座でした。
      その「不思議の国のアリス」のキャラクターが大事にしているアリスは、普通の人間がみえない少女。
      おとぎ話の世界に生きるアリスを、果たしてメアリは助けることができるのでしょうか。



メアリ  :ねぇ、皆って本当は旅の一座なんだよね?

女王   :そうだけど・・・今更何よ?

メアリ  :いや、何でこんな所にずっといるのかなーって思って。
      一つの場所で稼ぐにしても、こんな田舎町より都会の方がよっぽど儲かるのに。

白うさぎ :・・・待ってるんです。

メアリ  :待ってる?誰を?

眠りねずみ:アリスのお父さん。

メアリ  :え?だって、アリスのお父さんは行方不明だって・・・。

帽子屋  :行方が分からないのは本当だ。ただ、いなくなった理由は分かってる。

女王   :だから、こうして待つしかないの。

白うさぎ :僕達の座長が戻ってくるのを。



N    :ある時代のある国で、何処へ続くか分からない長い長い田舎道を、一台の馬車が進んでいました。
      乗っているのは旅の一座の芸人達。彼らは世界中を馬車で周り、
      言葉の壁や民族・人種の壁を乗り越えて人々に笑顔を届ける事を仕事にしていました。
      座長と四人の芸人。そして座長の娘、アリス。



アリス  :ねぇねぇ、今度の国はどんな国なのかな。子供が沢山いたら皆の不思議の国の御伽噺、人気かもね!

白うさぎ :そうですね、頑張って物語のキャラクターになりきらないといけませんね。
      ところで、僕の懐中時計はどうするんですか?

女王   :ああ、この前の興行で壊れちゃった奴?

白うさぎ :貴方が壊したんですよ!?

女王   :あれはほら、ちょっと手が滑ったっていうか、鞭が滑ったっていうかぁ・・・。

アリス  :あの!実は私・・・作ってみたんだよね。

白うさぎ :懐中時計を?

アリス  :作ったっていうか・・・前の時計、直しただけだし、ちょっと不恰好だけど。

白うさぎ :アリスは器用ですね。ありがとうございます。とっても助かりますよ。

女王   :でもさぁ。見た感じ、がっつり大儲け!!って訳にはいかなそうね、次の国。

白うさぎ :そうですけど・・・のどかでいい所じゃないですか。海も綺麗ですし。

眠りねずみ:そうそう!魚が美味しいんだってさここの海!毎日がお魚天国・・・。

白うさぎ :そんな贅沢できません!ただでさえ金欠なんですから。

眠りねずみ:えー!?そこを何とか!ほら、体を張ってお金稼ぐとかさぁ!

女王   :仕方ないわねぇ・・・ここはアタイが一肌・・・。

白うさぎ :それはちょっと!

女王   :・・・それは、ちょっと?なぁに?

白うさぎ :あ、えーっと・・・そ、それにしても、座長と帽子屋さん遅いですねぇっ?何してるんでしょうね?

アリス  :確かに、ちょっと遅いよね。どうしたんだろ・・・。

眠りねずみ:きっと、ほんの気持ちですとか言って貢物を貰ってきてる所なんだよ!魚の!

白うさぎ :あくまで魚にこだわるんですね。

アリス  :でも、魚美味しいから私も好きだし・・・そうだったらいいよね?

眠りねずみ:ねー。

女王   :ほーら、噂をすれば。帰ってきたみたいよ?

帽子屋  :はぁはぁ・・・大変だ!

女王   :何よ、血相変えちゃって。

眠りねずみ:やっぱり、魚が大量で持ちきれなかったとか?

帽子屋  :座長が・・・!

アリス  :お父さん・・・!?



N    :一座が訪れた国は、内戦の真っ只中。国中を渡り歩く予定だった一座は政府から目を付けられ、
      座長はスパイ容疑で捕らえられてしまったのです。



白うさぎ :そんな・・・僕達は、皆に笑顔を届けにきただけなのに・・・。

帽子屋  :町の人達は弁解してくれたんだが・・・政府があれじゃあ・・・。

アリス  :お父さん、今どこにいるの?

帽子屋  :詳しい事は分からないけど、多分保安部に。

アリス  :どこ?いつ帰ってくるの?

女王   :アリス・・・大丈夫だから。

アリス  :お父さんは何も悪くないんだよ!?戦争で苦しんでる人の為に何かしたいって・・・ただそれだけ・・・。

役人   :言い訳は結構ですよ。貴方がたにも座長同様スパイ容疑が掛けられています。
      罰を受けたくなければ、今すぐにでも出国してください。

アリス  :役人さん・・・。

帽子屋  :座長は今どこだ!?

役人   :本国に強制送還になりました。スパイをここにとどまらせるわけにはいかないのでね。

女王   :強制送還って・・・ちょっと待ちなさいよ!

白うさぎ :どこに返されたんですか!?

役人   :スパイの居所を教える訳にはいきません。とにかく、貴方がたはこの場で荷物をまとめて・・・。

アリス  :嫌よ!お父さんを返して!どこへやったのよ!私のお父さんをどこへやったのよ!?

白うさぎ :アリス!駄目ですよ!

アリス  :返してよ!お父さんを返して!!返してよ・・・!!(泣き崩れる)

役人   :と、とにかく!はやくここから出て行くんだな!


(役人立ち去る)


女王   :・・・ここで待ちましょう?座長が帰ってくるのを。

眠りねずみ:でもさ、どうすんの?僕達までスパイにされちゃうかもよ?

帽子屋  :監視でも何でも付けてもらって、この町から出ないようにすればいい。
      そんな生活が半年も続けば、あいつらも俺たちがスパイではないと気づいて逮捕は諦めるだろ。

眠りねずみ:でもでも!座長がここにまた戻ってくるなんて保証はないんだよ!?
      座長を探しに行ったほうが絶対早いよ!!

白うさぎ :でも僕達、座長の生まれ育った所なんて知らないですよ。

女王   :座長だけじゃない。アタイ達は皆、故郷を忘れた人間の集まりだもの。
      無駄に探し回ってすれ違うより、ここに残ったほうがいいわ、きっと。

帽子屋  :待つしかない、か・・・。



眠りねずみ:そして次の日の朝目覚めたら、アリスはもう今みたいになってた。

女王   :『おはよう、赤の女王様』そう言って、まるで御伽噺のアリスの様にスカートをつまんで挨拶したわ。
      きっと、忘れてしまいたくなるぐらいショックだったのね。

白うさぎ :理不尽な世の中も、父親と引き離された事実も・・・僕達の事も。

アリス  :・・・嘘よ・・・。

メアリ  :アリス・・・!?

アリス  :そんなの嘘!どうして皆嘘を吐くの!?

メアリ  :嘘を吐いてるのは、アリスでしょ!?(アリスの肩を掴む)

アリス  :!!

メアリ  :アリス、ちゃんと聞いて。

アリス  :嫌!聞きたくない!

メアリ  :本当は全部分かってるんでしょ?私の事も見えてるし、私の声も聞こえてる。

アリス  :いや、聞きたくない・・・いや、いやよ・・・やめて聞きたくない・・・いや・・・。

メアリ  :皆は旅の一座で、アリスと一緒に旅をしていたの!今はアリスと一緒にお父さんを待ってる!

アリス  :もう止めて!!

メアリ  :どうして分からないのよ!座長がいなくなって悲しいのは、皆一緒じゃない!
      その上アリスまでいなくなったら!

アリス  :・・・どういう事よ。私はココにいるわ。

メアリ  :不思議の国のアリスは、ここにいる。でも、本物のアリスは?
      一座の皆に大切にされて、座長であるお父さんの自慢の娘だった、アリスは?

アリス  :・・・。

メアリ  :皆も確かに、嘘を吐いてた。でも、それはアリスを愛してるから。アリスを守る為に、嘘をつき続けた。

アリス  :・・・守る、為・・・。

メアリ  :アリスの世界を守る為の、一番優しくて、一番悲しい嘘。

眠りねずみ:・・・頑張ろうよ、アリス。現実はそりゃ苦しいし、座長だっていつ帰るか分からないけどさ。

白うさぎ :お父さんが帰るまで、僕達がずっとアリスを守りますから。

帽子屋  :アリスが元気なかったら、俺達が座長に怒られるしな。

女王   :アリス・・・急にお父さんがいなくなって悲しいのは分かるわ・・・
      アタイ達より、よっぽど辛いと思う。でも、皆アリスの事愛してるのよ、お父さんに負けない位。
      それでも、やっぱり不幸せ?

アリス  :・・・。



メアリ  :はー・・・もう1ヶ月かぁ。何だかんだで居座っちゃった。でも何か、短いようですっごい長かったな。

女王   :それはいい意味で?悪い意味で?

メアリ  :んー・・・どっちも?

女王   :アンタさ、この1ヶ月で随分神経図太くなったんじゃない?

メアリ  :そんな事ないって。まぁ・・・ちょっとは、強くなれたかもしれないけど。

女王   :ちょっとなんてモンじゃないわよ?アリスに掴みかかったときのあの般若みたいな顔!

メアリ  :すごい頑張ったのにその感想!?

女王   :う・そ。見直したわよ。アリスが元気になったのもアンタのお陰だしね。

メアリ  :・・・たまに素直に言われると、すっごい照れるんだけど・・・。

女王   :ぜーんぜんアンタに感謝なんかしてない。お別れできて清々しますー。

メアリ  :・・・あっそ。それにしても、荷物凄まじいね・・・私こんなに持ち込んでた?

女王   :は?何馬鹿な事言ってんのよ。アンタの荷物はこれ。

メアリ  :・・・は?

女王   :いや、は?じゃなくて。これがアンタの荷物。手ぶらで現れてこんな荷物の山築ける訳ないじゃない。

メアリ  :え、じゃあ・・・この荷物って・・・?

女王   :アタイたちの荷物だよ。

メアリ  :え!?皆の荷物!?

女王   :おっそ!今頃!?1週間ぐらい前から荷造り始めてたと思うんだけどなぁ!

メアリ  :だって・・・座長、待たなくていいの?

アリス  :いいの。もう、待つのはやめた。

メアリ  :アリス・・・。

眠りねずみ:そうそう、ぽじてぃぶしんきんぐする事にしたって訳。

メアリ  :何、そのぽじてぃぶなんとかって。

眠りねずみ:何かよくわかんない。頑張るって事でいいんじゃない?

メアリ  :分からないなら使うなよ・・・。

アリス  :前向きに。

メアリ  :え?

アリス  :ポジティブシンキング。前向きにって意味。

眠りねずみ:ほら、今のこの状況にぴったりじゃん!

メアリ  :うん・・・結果が大事だもんね・・・。

アリス  :お父さん、探しに行く事にしたの。

メアリ  :探しに?だって、どこにいるかわからないんでしょう?

女王   :そうだね。でも、旅をしていたらどこかでアタイたちの噂を聞きつけて座長が会いにくるかもしれない。
      元々旅一座なわけだし、自分達で座長の意思を引き継いで旅を続ける方がいいと思ったんだ。
      その方が、座長と再会した時に胸を張れるんじゃないかってね。

アリス  :駄々こねて待つのはやめる。自分の足で、お父さんを見つけ出す。

メアリ  :なんか、アリスも強くなったね。

アリス  :メアリのお陰かな。

女王   :いやいや、アタイのお陰かも。

メアリ  :・・・なんで王道の空気を壊すかなぁ!ここで私が『そんな事ないって。アリスが頑張ったから』
      って続けるのが普通じゃないの!?

眠りねずみ:『ううん、メアリがいなかったら私、ここまで来れなかったと思うし・・・』

メアリ  :『え?あ、や・・・照れるなぁ!』

帽子屋  :そして恋に落ちる二人!

メアリ  :え!?誰と誰が恋に落ちるの!?

帽子屋  :俺が。

アリス  :ええ!?

白うさぎ :全然話聞いてない癖にいきなり恋愛発展に持ち込まないでください!

メアリ  :まったくよ・・・で、女王様は何で邪魔したのよ。

女王   :ほら、伝統って破る為の物だし?

白うさぎ :いや、伝統は引き継ぎましょうよ!破るのは凝り固まった規則でしょ!?

女王   :青春っぽく終わるのがいけ好かないんだよ。

帽子屋  :まぁ落ち着け。そんな事してると、1週間に一回の船を逃して皆で
      「ああー!」とかいうベタなオチになるぞ。

アリス  :そうだね!じゃあ、そろそろ行こっか。

女王   :ところで、ここにきて眠りねずみのテンションが急降下したのは何故?

メアリ  :魚天国の夢が叶わなかったからじゃない?

アリス  :でも、次の国は果物が年中いーっぱい実って・・・。

眠りねずみ:(食い気味で)果物天国も捨てがたいよねぇ、やっぱり!時代はフルーツだ!

メアリ  :・・・うん。色々良かったね、何か。元気でたみたいだし。

帽子屋  :さて、じゃあ新たな一歩を踏み出しますか!

白うさぎ :あれ・・・雨、降ってきましたね。

女王   :じゃ、出発は明日にしましょう。

メアリ  :はぁ!?

帽子屋  :賛成。だって帽子が濡れるじゃないか。

メアリ  :傘さしなさいよ!

アリス  :明日も雨だったら・・・?

眠りねずみ:明後日・・・かな。

メアリ  :ええ!?でも、船が出るのは今日よ!?次は1週間後よ!?

帽子屋  :そうだなぁ。まぁ気長にいこうや。今は雨季だし、仕方ないな。

女王   :そうね。長雨の後から出発してもまだ遅くないわ。

眠りねずみ:・・・うん、やっぱり。僕が魚食べてないからだ!よし!魚をいーっぱい食べよう!時代は魚だ!

メアリ  :え、眠りねずみ!?・・・いっちゃった。

アリス  :えーっと・・・お茶に、する?

女王   :そうね、そうしましょうか。

白うさぎ :荷物全部まとめたのに!?

帽子屋  :まぁそう言うな。荷解き手伝ってやるから。

女王   :せっかくだからマフィンでも焼こうかしらねー。

白うさぎ :キッチンの荷物まで開けるんですか!?本格的に雨季が終わるまで船乗らない気ですね!?

メアリ  :・・・出鼻、くじかれたね。

アリス  :でも、私達らしいかも。

メアリ  :そっかそっか・・・じゃあ、私も出鼻くじこっかな。

アリス  :自分で自分の出鼻をくじくの?自虐的。

女王   :ちょっと二人とも!お茶飲みたいならさっさと準備手伝って!

白うさぎ :二人とも早くしてください!じゃないと僕がマフィンの具材に加わりそうなんですから!

メアリ  :白うさぎも出発は諦めたんだ?

白うさぎ :・・・たまには、お茶会もいいんじゃないですか?

メアリ  :それもそうだね。よし、アリス行こ!

アリス  :うん!



2014/10/23



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